ムジマにまつわる豆知識

オーケストラ・ムジマに関する豆知識を紹介します。古典をメインに演奏しているため、他のオーケストラとはちょっと違った知識が身につきます。

古典派音楽とは

西洋音楽の古典派の時代は18世紀中頃~19世紀初頭を指します。
当時の音楽は、王侯貴族から雇われた音楽家たちが雇い主のために作曲・演奏する、ごく内輪のものでした。作曲家、演奏家、観客は共通の音楽的素養を持ち、音楽の「お約束」を共有していました。現在私たちが漫才やコントの「お約束」を楽しむように、当時の人々もハーモニーの変化や流行りのメロディなどの、音楽のネタの進行パターンや「お約束」のフレーズを楽しんでいました。
その後音楽の大衆化が進むと、内輪で楽しまれた「お約束」の文化は薄れてしまい、古典派時代の曲本来の面白さも分からなくなってしまったのです。
私たちは当時の人々が楽しんだ音楽の「お約束」を意識し、彼らが感じた興奮や感激を知りたい、そして伝えたいという思いを持って演奏に取り組んでいます。


ロマン派音楽とは

「男のロマン」という表現を耳にしたことがあると思いますが、まさにロマン派の「ロマン」とはこのこと。ロマン派をひと言で語るなら「感性」が強調される時代。
1814年のナポレオンの退位をきっかけに、ヨーロッパで自由主義思想が広がる中、娯楽文化にも個人の内面と深く結びついたロマン主義芸術が誕生します。宮廷内のみで楽しまれていた音楽は、コンサートやサロンの日常化により、少しずつ市民層にも発展していきました。
作曲家たちは、構造やハーモニーの進行に重きを置いていた古典派から脱し、想いのままに音を走らせ、緊張や緩和といった表現を獲得していきます。このような動きをもたらした大きな要素として、豊かな旋律や歌曲(リート)の登場、ピアノ作品の発展の三つがあります。
ムジマではこれまでにロマン派初期の作品を取り上げてきました。古典派音楽を数多く演奏してきた経験を礎とし、作曲家のパッションを感じられるような演奏を目指しています。


チューニングについて

オーケストラ・ムジマでは、古典調律法のひとつである「YoungII」を採用しています。

調律法といっても様々なものが存在しますが、研究者によって考え方が違うためにいろいろな調律方法が考え出されているのです。

チューニングをすると、楽器の音が合って全員の音が統一されるという認識がありますが、実は「うなり」が発生しています。

「うなり」とは、複数音が同時に響くとき周波数が合ってない状態を言い、波打つようにワンワンと音が鳴ります。逆に、純正 な響きは音が一本の矢のように、まっすぐ遠くまで届くような印象です。チューニングをする際、どの音間の幅を調整するかという ところで多数の考え方(妥協案)が生まれます。調律法が多く存在するのはこれが理由です。うなりの発生を防ぐため(最小限にとどめる) に周波数をわずかに広くしたり、狭くしたりして調整を計っています。これら多数の調律法のうち、どれを使用してもうなりを完全に避け ることは出来ませんが、調律法の中でもうまく「うなり」を調整できているという解釈で、ムジマはYoungという学者が発見した調律法 「YoungII」を使用しています。

この調律法の実践面で、一般のオーケストラとの違いは、弦楽器が弦を一本ずつチューニングするところです。「YoungII」の法則 (定められた周波数)に従い、五度の音程幅を調節しているためです。一般のオーケストラでは最初にコンサートマスターがオーボエから A音をもらい、弦楽器にその音を与えたら後は二本ずつ和音の響きを頼りに、一人で合わせます。

このように、二本ずつ弦を弾いて音を合わせる方法でも、「YoungII」の音の響きを覚えさえすれば可能です。しかし、まだ「YoungII」 の響きに不慣れな団員も多くこの方法をとると、ピッタリ合わせるのはなかなか難しいことです。

そのため、ムジマでは弦を一本ずつチューニングしています。コンサートではチューニングに時間をかけ、お客様にはお待たせして申し 訳ありませんが、「響きにこだわる」ムジマとしてはこの時間は大変重要です。質のよいアンサンブルもこのチューニング無くしては作り 出すことができないのです。

参考文献: 
ゼロ・ビートの再発見~「平均律」への疑問と「古典音律」をめぐって~ 
平島達司著 ショパン
ゼロ・ビートの再発見 技法篇~「古典音律」の解釈と実践テクニック~ 
平島達司著 ショパン


練習方法

ムジマの練習には団員のみの合奏練習「自主Tutti」と、指揮者・トレーナーをお招きしての「Tutti」や「セクション練習」があります。
中でもアンサンブル力の向上を目指す「自主Tutti」には力を入れており、団員同士で率直に意見を交わしながら音楽作りに取り組んでいます。